// $Id: xml020.txt,v 1.2 1999/12/22 06:36:07 hiyama Exp $ XMLへの招待 -- その技術と思想 檜山正幸 第20回 XMLページコンテスト、XMLフェスタ、XML開発者の日 ==>XMLマン /* すみません。今からイラスト起こすと辛い(不可能)とは思ってますが、可 能なら(不可能だろう、ウウ)、XMLマンに表彰をさせたのいのですが。毎度の 季節ネタとは別に、コンテストの入賞者にXMLマンが賞状を渡している、とい う図です。*/ ======================================================================MAIN ●(リード) 今回は、「XML WWWページコンテスト」の入賞作品の紹介と「XML開発者の日 (第2回)」の模様を報告しよう。また「XMLフェスタ」についても触れる。これ らのイベントの成果は、日本のXML技術・XMLユーザーが着実に水準を上げ、裾 野を拡げていることを示している。 ●「XML開発者の日」から生まれた2つのイベント 今年の3月に行われた「第1回 XML開発者の日」は、予想外の成功をおさめた。 そして当然に「第2回 XML開発者の日」が企画されたのだが、さらに2つの新し いイベントを生み出すことになった。「XML WWWページ コンテスト」と「XML フェスタ」である。 「XML WWWページ コンテスト」は、XML技術を利用したWebページ(以下XMLペー ジ)を広く募集して、優秀な作品を表彰しようという企画だ。一方「XMLフェス タ」は、XML関連の製品・サービスの展示、講演・セミナー、パネルディスカッ ションなどから構成される総合的なXMLイベントとなっている。 3つのイベントは、それぞれ次のような役割を持つ(*1)。 * 「XML開発者の日」 -- 技術者・研究者の議論と親睦の会合。 * 「XML WWWページ コンテスト」-- Web上での表現を競う場。 * 「XMLフェスタ」 -- 活用事例やビジネス情報を提供。 これらのイベント群により、技術者、ビジネスマン、 Webデザイナという、XMLにかかわる多様な人々に情報提供・情報交換の場を提 供できる。 ------ *1 「XMLフェスタ」という名称の使い方はやや混乱を招いたようだ。 「XMLフェスタ」は、「XML開発者の日」と「XMLページコンテスト」 を含むイベント群全体を指すつもりだったが、実際には11月11日/12 日の展示・セミナーなどを指す意味で使っていた。もう少し整理した ネーミングが必要なようだ。 実際、「コンテスト」の結果発表と表彰、「XML開発者の日」を含む3日間(11 月11日〜13日)には、多くの人々がつめかけ、XMLの現状や可能性を語り合った。 ● なぜXMLページコンテストなのか? 最初に「XML WWWページ コンテスト」の発端からの開催、そして審査までの 経緯を述べよう。 XML技術は実にさまざまな分野に応用されている。特に注目されているのは、 企業間の商取引や受発注のデータとしてXMLを利用する試みである。また、リ レーショナルデータベースに代わるデータベース技術としても期待されている。 しかしながら、このような大規模ビジネス応用は、一般のPCユーザーからは遠 い世界の出来事にようにも思える。実際、電子商取引にXMLが応用されたとこ ろで、ユーザーからXMLデータが見えるわけではない。 XMLがビジネスに応用されのは事実だが、XML応用がビジネスだけに限られな いのもまた事実。XMLの用途や可能性を限定すべきではない。より一層の普及 のためには、もっと身近にXMLを感じる機会が欲しい。誰でもが試すことがで きて、誰でもが見られるXML応用の形、それはWebページだろう。 MicrosoftのIE5は、ほぼ完全なXMLブラウザだから、XMLページのた めのクライアント環境は既に揃っている。今すぐに、アイディアと工夫次第で、XML技術 を活用したWebページができるはずだ。そして、優れたXMLページは人々にXML の力をデモンストレートし、さらに多くのXMLページを生み出し、XMLが浸透す る助けとなるだろう。 いま述べたことがXMLページコンテスト開催の動機だった。幸いにも、「第1 回 XML開発者の日」の収益と企業からの寄付金をもとに実現することができた。 W3Cで活躍する村田真さん、日本XMLユーザーグループ代表の川俣晶さんと共に、 私も運営と審査員をつとめた。審査はなかなかに手間がかかる作業だったが、 それは実に楽しい時間でもあった。 ● エントリ作品と審査結果 応募締め切りの10月1日までに15の作品がエントリされた。この数は少ないよ うだが、その水準の高さからいえば、第1回コンテストとしてはたいへんな充 実ぶりだった。審査する側としては15でも相当な数で、もし30あったらと想像 するとちょっとぞっとする。 これらの作品は、http://www.xml.gr.jp/99contest/ からリンクをたどって アクセスできる。ともかく、まずはご覧になっていただきたい。楽しい作品、 見事なプログラミング、予想外のWebページに遭遇できる。審査の総評や入賞 作品に対する審査員コメントも読むことができる。 最終的な選考は10月29日にアスキー内の会議室をお借りして行った。村田、 川俣、檜山の他に、ページデザインの立場から鈴木徹さん( (株)アイアイジェ イ メディアコミュニケーションズ)にも審査に参加していただいた。 結果は 次のとおりだ(作者敬称略)。 ・一席 「European Geografic」小林裕治 http://www.aurora.dti.ne.jp/~y-koba/contest/top.xml ・二席 1. 「日曜かてい教師おやじ」中村英児、高橋正志、川村勝也、大東明子 http://www.terra.dti.ne.jp/~peter/oyaji/sunday-oyaji.htm 2. 「SmartDoc」浅海智晴 http://www.asahi-net.or.jp/~dp8t-asm/java/xmlcon/ ・三席 (佳作) 1. 「あめ湯」薬師寺国安、薬師寺聖 http://user.shikoku.ne.jp/kyss/ameyu/top.xml 2. 「国旗国歌法」佐郷幸治 http://www.d1.dion.ne.jp/~sago/top.xml 3. 「The TOWER」RAPUNZEL http://www.the-tower.to/ 4. 「Healing Square」MMTXプロジェクト http://www.asahi-net.or.jp/~eb7s-khr/healing/index.xml 5. 「MY EXOTIC FAMILIES」高木 健 http://www.cnet-sc.ne.jp/ken-t/mypets/mypet.htm" ● Jon Bosak氏も感嘆した素晴らしい入賞作品たち 「XMLフェスタ」の基調講演には、XMLの父ともいえるJon Bosak氏(*2)をお招 きした。夕方からのレセプションの席で、Bosak氏は「アメリカでは、これほ どのXMLページは見たことがない」と語っていた。この言葉はお世辞ではない。 日本のXMLぺージは世界的にも高い水準なのだ。 ------ *2 XMLのアイディアをW3Cに提案し、XML WG議長として「XML 1.0」制定 の中心人物であった。現在は、XML CG (Coordination Group)の議長で ある。 一席の「European Geografic」は、ヨーロッパの地図と地誌データを表示す るページだが、ベクトルグラフィックスを使ってスケーラブル(サイズ変更可 能な)な地図を実現している(画面$1)。地図そのもの、対話的に表示される様々なデー タ(首都、面積、産業別人口など)は、すべてXMLファイルに格納され、XSLTと VBScriptにより表示と対話機能を与えている(画面$2)。クライアント(IE5)側で計算や 描画を行うので反応は軽快である。それでいて、ラスタ画像データをまったく含まな いのでデータ転送量も抑えられている。再利用性や発展性も高く、大規模なシ ステムになっても高速性を失わない作りとなっている。 ==>画面$1 [小林裕治氏作「European Geografic」] /* 上記URL */ このページがXMLであることを実感するには、ブラウザのソース表示を眺める とよい。独自タグにより地図・地誌データがマークアップされている。もちろ ん、別なデータを用意することにより、ヨーロッパ以外の地図システムを作る ことは容易だ。XML応用の良きお手本となるページだ。 ==>画面$2 [「European Geografic」のXMLソース] /* 「ソース」で表示 (メモ帳画面) */ 二席には2つの作品、「日曜かてい教師おやじ」と「SmartDoc」が入っている。 「日曜かてい教師おやじ」は抜群のコンセプト、「SmartDoc」は技術力で圧倒 した作品である。 「日曜かてい教師おやじ」は、算数や英語の問題を提示・採点するページで ある(画面$3)。一見、表面上は、一昔前のCAI(Computer Assisted Instruction)のよう であまりパッとしないかもしれないが、発想と仕掛けが素晴らしい。学習用問 題はXMLファイルで与えられる。これらの問題はメールやWebページを通して収 集され、インターネット上の問題リポジトリ(貯蔵庫)を形成する。(残念なが ら、収集と貯蔵のメカニズムはできあがっていなかった。) 提示される練習問題は、 これらのリポジトリから抽出編成される(予定)なのだ。未完とはいいながら、 そのプランが評価され二席となった。 ==>画面$3 [中村/高橋/川村/大東 氏作「日曜かてい教師おやじ」] /* 上記URL */ 「SmartDoc」はユニークな応募作である。Webページというよりはソフトウェ アが作品なのだ。XML応用としては正統派であり、単一のXML文書から、HTML、 LaTeX、JavaHelpなどへ変換するプログラムがSmartDocである。応募のWebペー ジは、SmartDocにより作られたHTMLページであり、SmartDocを解説するものと なっている(画面$4)。SmartDocは実用性が高い優れたXML応用ソフトウェアであり、Web ページもよくできている。抜群の技術力で(XMLページと呼んでよいか疑問であっ たが)二席をもぎ取った。 ==>画面$4 [浅海智晴氏作「SmartDoc」] /* 上記URL */ ==>XMLマン /* 無理だと知りつつ、冒頭参照 */ ● その他の作品も力作ぞろい その他の三席が5作品あり、それぞれに個性的な機能や表現を競っている。三 席と選外の境界は微妙であった。もっと正直に言えば、審査員の好みと運で決 まってしまったのである。選外でも見るべき作品は多い。 三席の「あめ湯」は実に楽しい作品だ。エンターテイメント性とイラストの質で は一番といってよい。「国旗国歌法」は、表現はいまひとつだが、リンク機構 (XLink)を使った点で野心的。「The TOWER」はサーバサイドでのXML応用を見 せてくれた。「Healing Square」は努力賞である。知恵を絞った工夫や、かけた 労力には頭が下がる。「MY EXOTIC FAMILIES」は標準的な作りで新奇性には欠 けるが、少し変更して各自のページを作る下敷きには向いている。 選外で私の一押しは「XML暴走族」 (http://user.shikoku.ne.jp/kyss/zoku/top.xml)だ。わけの分からない情熱 が横溢している。文字通り暴走しているページだが、草の根XMLパワーを見せ つけてくれた。 みなさんも、http://www.xml.gr.jp/99contest/ を訪れて、力作の数々を鑑 賞していただきたい。 /* ここから 開発者の日のネタ */ ● 第2回も活気と熱気に満ちた「XML開発者の日」 11月13日(土曜)は、「第2回 XML開発者の日」だった。次の9つの発表が行わ れた。 1. Unicodeテキスト処理とその周辺 (前寺正彦) 2. 迷走する統一文字団への諫言(かんげん)楽組曲 (小林龍生 + 川俣晶) 3. XML法情報データベースの課題(夏井高人) 4. 改正法律対応の法令データベース(和田悟) 5. 法令とリンク情報(小松弘) 6. XMLエディタ実装の手法と問題点 (難波亮丞 + 檜山正幸) 7. XMLを使った電子出版交換フォーマット JepaX (渋谷誠) 8. XMLデータベースを用いたワークフロー管理システム (桑原のりあき) /* 「のりあき」の漢字、後でお知らせします */ 9. DSIG: XML文書への電子署名 (丸山宏) 文字では雰囲気を伝えることができないのが悔しくてならないのだが、簡単に その内容を紹介しよう。 午前中は文字に関する話題が2件。最初の発表者は前寺さん。この発表は、 Unicode標準を復習し、規格の曖昧さや実在する実装の不具合などを詳細に報 告したものだ。ここまで執拗にUnicodeの動向を追いかけている日本人がいる ことに驚いたり、感心したり。次はおなじみの小林さん、川俣さんのタッグチー ム。Unicodeコンソーシアムの内部から(小林)、そして外部から(川俣)、最近 のUnicode拡張(*)の動きを厳しく批判した。 ------ * ルビ(フリガナなどの上付き、横付きの小さな文字)、数学記号などを Unicodeの範囲内で実現しようという提案。 午後の3件は、いずれもSHIP(社会・人間・情報プラットフォーム)プロジェク トからの報告である。法律情報データベースにXMLを応用する計画と、さまざ まな問題点を指摘した(*)。夏井さんの情熱的なトークには、会場からも熱心な質 問があった。和田さんによる改版履歴管理(versioning)問題の指摘、小松さん による階層構造や参照の精密な分析など、XML専門家にも新鮮な話題だった。 ------ * XMLの元となったSGMLは、法律データベースのプロジェクトから生ま れたものだ。その意味で、法律とマークアップ技術は、伝統的に関係 が深いのだ。 次の2件は、XMLオーサリング(文書作成)と出版に関するもの。難波さんの発 表(私もほんの少しお手伝いした)では、WYSIWYGワープロのユーザーインター フェースを備えながらも、内部的には完全なXMLエディタとして設計された 「一太郎Ark」の構造や開発上の問題点を、とぼけたジョークをまじえながら も切々と語った(*)。渋谷さんは、日本の電子出版の標準フォーマットとすべ く開発が進んでいるXMLタグセットJepaXに関して報告。オーサリングと出版の 環境が整うことで、XML文書が紙に取って代わる状況が見えてくる。 ------ * 3 難波さんと私の発表内容の一部は、 http://www.justsystem.co.jp/ark/ の下に発見できるだろう。この ページは、開発者の赤裸々な声がのっていて、なかなか楽しめる。 最後の二件は、XMLを現実のビジネス、シビアな応用へと適用する話である。 桑原さんは、現実に稼働してるワークフロー管理システムを、CORBAやXMLデー タベースeXelonとの関係を含めて解説された。丸山さんの発表は、現在ホットなXML 電子署名の諸側面を要領よくまとめた報告である。このお二人の発表には、会 場から実務的な質問がさかんに浴びせられた。 このように羅列してしまうと、 なんだかたんたんと発表が進んでいったよう だが、実際は違う。タイムキーバーの村田さんと私は大いに苦労した。どの発 表も中身が濃く、規定の時間ではもの足りない。会場からの質問も次から次に 湧き起こる。熱のこもった質疑応答が続く。お昼とお茶の時間を大幅に短縮し ても、30分、40分と時間が超過してしまう。これが朝10時から午後6時半まで。 ほとほと疲れ果てた。が、こんなに心地よい疲れもまたとない。日本でもXML 技術が着実に進化していること、その水準は世界に引けを取らないことを楽し く確認できた一日だった。 ● Jon Bosak氏の語ったXMLチームワーク 「XMLフェスタ」の初日、Jon Bosak氏による「XMLチームワーク」というタイ トルの講演が行われた。チームワークの意味は、XML関連諸仕様の関係でもあ るし、業界、企業、人々が互いに協力して、XML基盤を構築し、また応用して いく体制を意味する。 ==>イメージ [「XMLフェスタ」で語るJon Bosak氏] /* アスキーのWeb新聞に出てました */ /* したにURLあり */ XMLそれ自体は、色を持たない技術である。どのような対象にも応用できるし、 どのようにも運用できる。使い方によっては、非効率や混乱をまねくかもしれ ない。XMLだけで再利用性や相互運用性を保証できるわけではない。使う側が 注意深く使うとき、期待された能力を発揮できるのがXMLである。そして、有 効な使い方の鍵を握るのは、多くの場合、人々の協力や合意である。 ベンダーが不注意に非準拠な製品を作ったり、ユーザー集団(たとえば企業) が、それぞれに非互換なタグセットを設計すると、相互運用性は実現しない。 今や、オープンで公平なプロセスにより、協調してXMLプラットフォームを整 備すべき時期が来ている。XMチームの一員として行動すること、それを自覚し なくてはならない。 ● さて次は 私はXHTMLの意義を高く評価している。前回XHTMLに簡単に触れたが、もう少 し深く掘り下げる価値がある話題だ。という次第で、次回はXHTMLのインパク トとは何であるか、XHTMLをどう利用すべきか、などについて考えることにし よう。 /* レイアウト変わる */ ●参考URL * http://www.xml.gr.jp/xmlfesta.html XMLフェスタの概要 * http://www.xml.gr.jp/99contest/ XMLページコンテストの概要、作品へのリンクなど * http://www.justsystem.co.jp/ark/ 「一太郎Ark」サイト * http://x.jepa.or.jp/jepax/ JepaXのホームページ * http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/1999/1115/netw02.html Jon Bosak氏講演の記事 /* もっと短いURLはないのか? */ * http://www.isc.meiji.ac.jp/~sumwel_h/legalinfo/ 夏井高人氏の法情報学研究会ホームページ /* end */